Hypertension
高血圧
高血圧について

高血圧とは、安静時にも血管内の血圧が慢性的に高い状態が続く疾患で、日本人の3人に1人が該当するといわれる極めて身近な生活習慣病の一つです。放置すると動脈硬化をはじめ、脳卒中や心筋梗塞、心不全、腎不全といった重篤な疾患のリスクが高まるため、早期発見と継続的な管理が重要です。高血圧は自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行していることも少なくありません。日常的な血圧測定を通じて、正常な血圧値を保つことが健康寿命の延伸につながります。
当院では、患者様一人ひとりの生活習慣や体質に応じて、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせたオーダーメイドの治療をご提案しています。単に数値を下げることを目的とするのではなく、将来の脳心血管イベントの予防を見据えたトータルケアを重視しています。
高血圧の症状
高血圧は“サイレントキラー(沈黙の殺人者)”と呼ばれるように、初期には自覚症状がほとんどないのが特徴です。そのため気づかないまま長期間放置されるケースも多く、知らず知らずのうちに動脈や臓器にダメージが蓄積していきます。
症状が出た場合には、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、動悸、息切れ、視力障害などが見られることがありますが、これらは血圧の変動による一時的なものから、すでに合併症が進行しているサインまでさまざまです。
特に、朝起きた直後に強い頭痛や吐き気を感じる場合や、夜間頻尿、胸痛などがある場合は、速やかな医療機関の受診が必要です。自覚症状がないからといって安心せず、定期的な血圧測定と健康診断の継続が重要です。
高血圧の原因
高血圧の多くは、はっきりとした原因が特定できない「本態性高血圧」です。
これは遺伝的要素や加齢に加え、塩分過多、肥満、運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなど、複数の生活習慣要因が重なって発症・進行します。
日本人は特に塩分に対する感受性が高いため、食塩の摂取量が多いと血圧が上昇しやすい傾向があります。その他、睡眠不足や冷え、気温の変化なども一時的な血圧上昇の要因となります。
一方、腎疾患、ホルモン異常(原発性アルドステロン症やクッシング症候群など)、薬剤の副作用などが原因となる「二次性高血圧」も存在し、特に若年者や高齢者で急に血圧が上昇した場合には、精密検査が必要です。当院では、原因精査を含めた総合的な評価に基づき、根本的な対策を講じていきます。
高血圧の診断基準
高血圧の診断は、日本高血圧学会のガイドラインに基づき、以下の血圧値によって判断されます。
- 正常血圧:収縮期血圧<120mmHg かつ 拡張期血圧<80mmHg
- 高値血圧:収縮期血圧120〜129mmHg かつ 拡張期血圧<80mmHg
- 高血圧(Ⅰ度):収縮期血圧130〜139mmHg または 拡張期血圧80〜89mmHg
- 高血圧(Ⅱ度):収縮期血圧140〜159mmHg または 拡張期血圧90〜99mmHg
- 高血圧(Ⅲ度):収縮期血圧160mmHg以上 または 拡張期血圧100mmHg以上
診察室での測定値だけでなく、家庭血圧の測定も非常に重要であり、家庭での測定では「135/85mmHg以上」が高血圧の目安とされます。診断には、複数日にわたり繰り返し測定することが推奨され、白衣高血圧(診察室でだけ高くなる)や仮面高血圧(診察室では正常だが家庭で高い)にも留意が必要です。当院では、家庭血圧の記録指導や24時間血圧計(ABPM)なども取り入れ、正確な診断と治療方針の決定を行っています。
高血圧の治療
高血圧の治療は、「将来的な脳卒中や心筋梗塞などの重大な疾患を予防すること」を目的に、継続的かつ段階的に行うことが基本です。当院では、患者様の年齢、生活環境、合併症の有無などを丁寧に評価し、一人ひとりに最適な治療法をご提案しています。
まず、すべての高血圧の基本となるのが生活習慣の見直しです。塩分を1日6g未満に抑える減塩指導や、野菜や魚を中心としたバランスの取れた食事、体重管理、定期的な有酸素運動(ウォーキングなど)、禁煙、節酒、ストレス管理などを継続することで、血圧の安定化が期待できます。当院では管理栄養士による個別栄養相談や、継続しやすい生活改善プランの提案も行っています。
これらを実践しても血圧のコントロールが難しい場合は、薬物療法を開始します。降圧薬には、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬、β遮断薬など複数の種類があり、それぞれ効果や副作用の特徴が異なります。当院では、血圧だけでなく腎機能や心機能、糖尿病や脂質異常症の合併の有無を考慮しながら、できるだけ少ない薬剤で効果が得られるよう調整していきます。
さらに、白衣高血圧や仮面高血圧が疑われる場合には、24時間血圧測定(ABPM)や家庭血圧の記録を参考に、精度の高い評価を実施しています。高血圧は「長く付き合う病気」だからこそ、患者様ご自身の理解と主体的な取り組みがとても重要です。当院では、医師だけでなく看護師や栄養士もチームでサポートし、安心して治療を続けられる環境を整えています。