Obesity

肥満症

肥満症について

肥満症とは、単に体重が多いという状態ではなく、過剰な体脂肪の蓄積によって健康に悪影響を及ぼす疾患です。肥満は、糖尿病・高血圧・脂質異常症・高尿酸血症・睡眠時無呼吸症候群・心疾患・脳卒中など、多くの生活習慣病のリスクを高める“基盤疾患”といえます。

医学的には「BMI(体格指数)25以上」を肥満と定義し、特に肥満が原因で健康障害が認められる場合に「肥満症」と診断されます。近年は「メタボリックシンドローム」や「サルコペニア肥満」なども注目されており、体重だけでなく脂肪の分布や筋肉量も含めて総合的に評価する必要があります。

当院では、食事・運動・生活習慣の見直しと併せて、医学的な根拠に基づいた肥満症治療を提供し、無理のない減量と生活習慣病の予防をサポートしています。

肥満症の症状

肥満症そのものに特有の症状はありませんが、体重増加に伴いさまざまな不調が現れることがあります。

具体的には、動悸や息切れ、疲れやすさ、膝や腰の痛み、睡眠の質の低下、いびき、日中の強い眠気、便秘、月経不順などが挙げられます。また、皮膚の間に湿疹やかぶれができやすくなるなどの皮膚症状もよく見られます。体重が増えることで関節への負担が大きくなり、変形性膝関節症など整形外科的な問題も起こりやすくなります。さらに、無症候性で進行する糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が隠れているケースも多く、肥満がこれらの発症を加速させるリスクがあります。

体重の変化に気づいた段階で早めにご相談いただくことで、合併症の予防や改善が期待できます。

肥満症の原因

肥満症の原因は、基本的には摂取エネルギー>消費エネルギーの状態が長期間続くことで体脂肪が過剰に蓄積することにあります。食べ過ぎ、運動不足、間食の習慣、夜遅い食事、アルコールの過剰摂取などが主な生活習慣上の要因です。

現代社会では、デスクワーク中心の仕事やストレスによる過食、コンビニ食やファストフードの利用増加などが肥満の背景にあります。また、遺伝的な体質、女性ホルモンの変化(特に更年期以降)、睡眠不足や自律神経の乱れ、甲状腺機能低下症など内分泌異常も原因になり得ます。一方で、心理的要因による「ストレス太り」や「報酬型過食」なども無視できません。

当院では、単なるカロリー制限にとどまらず、それぞれの背景にある生活・心理的要因も丁寧にヒアリングし、個別の対策を講じます。

肥満症の診断基準

肥満症の診断には、主にBMI(Body Mass Index)が用いられます。BMIは「体重(kg)÷身長(m)²」で算出され、以下の基準が日本肥満学会により定められています。

標準体重 BMI 18.5~24.9
肥満(1度) BMI 25.0~29.9
肥満(2度) BMI 30.0~34.9
肥満(3度) BMI 35.0~39.9
肥満(4度) BMI 40.0以上

しかし、肥満症と診断されるには、BMIだけでなく、肥満により健康障害(高血圧・糖尿病・脂質異常症・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群・変形性関節症など)があることが必要です。また、ウエスト周囲径も重要で、男性85cm、女性90cmを超える場合は、内臓脂肪型肥満の可能性が高いとされます。

血圧・血糖・脂質などの検査も行い、総合的に判断することが求められます。当院では、身体計測と採血、必要に応じた腹部エコーなどを通じて正確な診断を行い、適切な対応につなげています。

肥満症の治療

肥満症の治療は、「減量」と「健康障害の改善」を目的とした包括的なアプローチが基本です。最初のステップは生活習慣の見直しです。具体的には、1日3食をバランスよく摂取し、間食や甘い飲料の制限、適切な食事時間の確保、塩分・脂肪・糖質のバランス調整などを行います。さらに、ウォーキングや軽い筋トレなどの継続可能な運動を組み合わせることで、脂肪燃焼を促進し、基礎代謝を維持します。当院では管理栄養士による食事指導や、患者様の生活リズムに合わせた行動変容支援も行っています。

これらの生活療法で効果が不十分な場合には、肥満症治療薬の使用も選択肢となります。現在日本で使用できる薬には、食欲を抑える薬、脂肪吸収を抑制する薬、血糖値と体重を同時に改善するGLP-1受容体作動薬などがあります。薬物療法はあくまで「補助的な手段」であり、医師の管理のもと安全に行うことが前提です。

また、睡眠時無呼吸症候群などの合併症がある場合には、そちらの治療と連携しながら進めることもあります。当院では、リバウンドを防ぐための「続けられる治療」を大切にし、体重という“数字”だけでなく、心身の健康を取り戻すための支援を多職種で行っています。