Sas

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群について

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる、あるいは浅くなる病気で、医学的には「10秒以上の無呼吸が一晩に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上」ある状態と定義されます。
代表的なタイプは、のどの気道が閉塞する「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」で、肥満、中高年の男性に多く見られます。本人に自覚がないことも多く、いびきや日中の強い眠気、集中力の低下などが周囲の指摘で気づかれるケースも少なくありません。
放置すると、高血圧、不整脈、心不全、脳卒中、糖尿病などのリスクを高め、重大な合併症につながる可能性があります。
当院では、簡易検査から専門的な精密検査、治療方針のご提案まで一貫して対応しており、日常生活の質(QOL)改善と合併症予防を目指した診療を行っています。

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状は、「大きないびき」と「日中の強い眠気」です。睡眠中、呼吸が止まることで繰り返し覚醒反応が起こり、深い眠りが妨げられます。その結果、本人が十分眠ったつもりでも脳や体は休めておらず、朝起きたときの倦怠感や頭痛、熟睡感の欠如が見られます。
日中の強い眠気により、会議中や運転中に居眠りしてしまうケースもあり、交通事故の原因となることもあります。その他にも、起床時の口の乾き、夜間頻尿、記憶力・集中力の低下、性欲減退、うつ状態など、心身に幅広い影響を及ぼします。特に運転業務に携わる方や、高血圧や糖尿病などの既往がある方は注意が必要です。
いびきが大きい、寝ている間に呼吸が止まっていると指摘された方は、早めの検査をおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群の多くは「閉塞性無呼吸(OSA)」と呼ばれ、睡眠中に舌や咽頭の筋肉がゆるむことで気道がふさがり、空気の流れが遮断されることが原因です。肥満は最大のリスク因子で、首まわりや上気道周囲に脂肪が付着することで気道が狭くなりやすくなります。また、扁桃肥大や小顎、鼻中隔湾曲といった構造的な要因、加齢による筋力低下、アルコール摂取、喫煙、仰向け寝の習慣も発症リスクを高めます。
稀に、脳から呼吸指令が適切に出ない「中枢性睡眠時無呼吸(CSA)」もあり、心不全や脳血管障害などが背景にあることもあります。女性では更年期以降にリスクが上がることも知られています。当院では、生活背景や体格、既往歴も含めた丁寧な問診と、必要に応じた検査で原因を明確にし、適切な治療につなげています。

睡眠時無呼吸症候群の診断基準

睡眠時無呼吸症候群の診断は、「無呼吸・低呼吸指数(AHI:Apnea-Hypopnea Index)」を基準に行われます。これは1時間あたりの無呼吸または低呼吸の回数を示す指標で、以下のように分類されます。

正常 AHI < 5
軽症 AHI 5~14
中等症 AHI 15~29
重症 AHI 30以上

診断には、自宅で行う簡易型の「簡易睡眠検査(パルスオキシメトリ)」や、医療機関で一泊して行う「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」が用いられます。
血中酸素飽和度(SpO₂)や脳波、眼球運動、筋電図などを測定することで、より詳細な睡眠状態と無呼吸の影響を把握できます。
当院では、まず簡易検査を行い、必要に応じて専門施設への紹介や精密検査につなげる体制を整えております。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の治療は、重症度や原因に応じて段階的に行います。まず重要なのは生活習慣の見直しです。減量によって気道の圧迫が軽減され、無呼吸の改善につながることが多くあります。また、仰向け寝を避ける、就寝前の飲酒を控える、規則正しい睡眠習慣を身につけるなどの環境調整も効果的です。
中等症~重症の閉塞性無呼吸に対しては、最も有効とされる治療法がCPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)です。専用のマスクから空気を送り続け、気道の閉塞を防ぐことで無呼吸を解消します。多くの方が、導入初日からいびきや眠気が改善され、生活の質が向上したと実感されています。当院では、CPAP導入後の使い方フォローやデータ管理も行い、長期的な継続を支援しています。
軽症の方やCPAPが難しい方には、マウスピース(口腔内装置)の装着や、生活習慣の徹底的な改善を指導します。また、扁桃やアデノイド肥大がある場合には耳鼻咽喉科と連携した外科的治療が検討されることもあります。